
間瀬真知香(ませ・まちか)はルイボスティーの入ったカップに手を伸ばしたとき,高2の何戸家奈留沙(なんとか・なるさ)と弟の夏太(なつた)が入ってきたので,手を振って微笑みながらいった。
「おはようございます。今日は“面積”で遊びましょう」
◎面積は増える?
真知香はさっそく2人に工作用紙を渡していった。
「まず, 8×8マスの正方形に注目してください」
「夏太くんは,次のように線を引いて,カッターで切り取ってください」
「奈留沙さんは,裏が緑色の工作用紙で夏太くんと同じサイズのものをもう1セット作ってください。ただし,斜線の入れ方は夏太くんのと反転しています」
「夏太くんの直角三角形と台形は,奈留沙さんの形をひっくり返すと一致します。それぞれ直角三角形と台形を1つずつ出して,奈留沙さんのは裏返して緑色が見えるようにして,組み合わせて長方形を作ってください」
「できました」
2人は声を揃えていった。
「長方形の面積は,いくつですか」
真知香が聞いたら,
「 5×13だから65です」と,夏太が即答した.
「もともとの正方形の面積はいくつでしたっけ」
真知香が聞くと, 8×8(はっぱ)64です,と九九で奈留沙が答えた。
「あれ」と, 2人はほぼ同時に声をあげた。
◎面積は減る?
「ヘンですねぇ。面積が1増えました」
真知香は続けていった。
「次は, 13×13マスの正方形に着目してください」
「夏太くんはさっきと同じ要領で,奈留沙さんも裏が水色の用紙で,夏太くんの斜線を反転させた線を切ってください」
「できましたら,さっきと同じく,2人の直角三角形と台形を1つずつ組み合わせて,長方形を作ってください」
真知香はここまで一気に説明して,ルイボスティーを口にした。
「できました。今度は面積が……, 13+8に8を掛けて,168になります。でも正方形の面積は13の2乗だから169です。今度は面積が1減りました」
夏太は張り切っていったが,2人とも考え込んでいる。
続きは日経サイエンス2023年9月号にて
間瀬 真知香(ませ・まちか)フリーの実験数楽者
何戸家 奈留沙(なんとか・なるさ)高校2年生
何戸家 夏太(なんとか・なつた)高校1 年生。奈留沙の弟