
核融合の実現を目指した巨大実験装置の準備が,日本と欧州で佳境に入っている。茨城県那珂市の量子科学技術研究開発機構(QST)に日欧共同で建設した核融合実験装置「JT-60SA」は,5月末に試験運転を開始した。超電導コイルが作り出す強い磁場によってプラズマをドーナツ形の空間に閉じ込め,模擬燃料の重水素2つを融合してエネルギーを発生させる。
装置は2020年に完成したが,試験運転を始めたところ,電流を流す電路の絶縁が劣化し放電を起こすトラブルが発生した。問題箇所を洗い出し,100カ所以上を補修して,2年2カ月ぶりに試験運転の再開にこぎつけた。今秋にプラズマの生成実験を開始する見通しだ。
一方,日本,米国,欧州,ロシア,韓国,中国,インドの7極が共同で南フランスで開発を進めている国際熱核融合実験炉ITERは,建設が全体の8割まで進み,その巨大な姿を現し始めた。2025年にプラズマの生成実験を開始し,2035年から本来の燃料である重水素と三重水素の核融合による定常運転の実験を始める計画だ。
ここ数年,核融合への関心は急速に高まっている。研究に長く携わってきた文部科学省技術参与(元QST量子エネルギー部門長)の栗原研一は,「2010年代半ばから追い風を感じるようになり,2018年ごろに大きなうねりになってきた」と話す。
続きは日経サイエンス2023年8月号にて
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