日経サイエンス  2023年8月号

フロントランナー挑む:第138回

AIが仮説,ロボが実験 サイエンスの営み変える:高橋恒一

青木慎一(日本経済新聞編集委員)

AIとロボットを組み合わせ
研究と実験の自動化に取り組む
「AI駆動科学」の実現が夢だ

生命科学のプロセスを完全に自動化する――。理化学研究所バイオコンピューティング研究チーム・チームリーダーの高橋恒一はこんな研究に取り組んでいる。ロボットと人工知能(AI)を組み合わせ,iPS細胞を網膜の細胞に効率的に分化させることに成功した。AIによる自動化で「実験・観察」「理論」「シミュレーション」「データ(統計学など)」の方法論に続く「第5の科学」の確立を目指す。(文中敬称略)

神戸市のポートアイランドにある理研のビルに,生命科学実験の自動化の拠点がある。AIが実験計画を立て,双腕型のロボット「まほろ」に手順や条件などを示し,実験を高精度にこなす。

ロボットは自動顕微鏡で観察した最新の細胞の画像をAIに送る。AIは細胞の状態を分析して次に何をすべきか判断し,ロボットに次の指示を出す。このサイクルを繰り返すことで学習を繰り返し,システムが洗練されていく。2022年,このタッグが成果を上げた。(続く)

続きは日経サイエンス2023年8月号にて

高橋恒一(たかはし・こういち)
理化学研究所チームリーダー。理化学研究所生命機能科学研究センターバイオコンピューティング研究チーム・チームリーダー。1974年秋田県生まれ。2004年慶應義塾大学で博士号取得後,米国・分子科学研究所に留学。2009年理化学研究所チームリーダー。慶應義塾大学環境情報学部特別招聘教授などを兼務する。科学技術振興機構(JST)未来社会創造事業「ロボティックバイオロジーによる生命科学の加速」研究開発代表者を務める。