日経サイエンス  2023年7月号

特集:愛情の神経科学

編集部

 哺乳類の多くは特定のパートナーを持たない乱交性だが,米国中西部にすむプレーリーハタネズミは特定の相手と一生をともに過ごす珍しい一夫一妻制だ。脳内のどの部位でどんな遺伝子が働くことによってこの絆が形成されるのか,最新の科学によって光が当たった。かつては「愛情ホルモン」と呼ばれるオキシトシンが必須だと考えられていたが必ずしもそうではなく,脳の多くの領域が関与しているようだ。哺乳類が生まれて最初に抱く愛情は世話をしてくれる親へのそれである。赤ちゃんは4カ月ごろから親から抱きしめられると他人とは違う特別な反応を示すようになる。愛情の芽生えといえるこの過程が,子の心身の発達に重要な意味を持つことがわかってきた。

なぜ浮気をしないのか
  S. フェルプス/Z. ドナルドソン/D. マノーリ
赤ちゃんが愛情を抱くメカニズム
  吉田さちね