日経サイエンス  2023年4月号

脱炭素コンクリート

M. フィシェッティ(SCIENTIFIC AMERICAN編集部)

ビルに道路,歩道,橋,そして考えうるほぼすべての構造物の基礎――コンクリートは至る所に使われている。人類が地球上で最も多量に生産している材料がコンクリートであり,その量は世界の開発(特に中国とインド)が進むのに伴い増えている。セメント(砂や砕石を結びつけてコンクリートにする粉末状の結着材)は製造に最もエネルギーを食う製品のひとつだ。セメントに用いられる石灰石は,ほぼ化石燃料だけで運転されている巨大なキルンによって1450℃の高温で焼かれる。製造過程の化学反応に伴い,さらに二酸化炭素(CO2)が生じる。1kgのセメントを作るごとに1kgのCO2が大気中に放出される。世界のセメントとコンクリートの製造によって毎年生じるCO2は,人類の全CO2排出の9%に相当する。 

セメントとコンクリートの製法は過去100年ほとんど変わっていない。だが,強度を損なうことなくセメントの一部を煆焼(かしょう)粘土に置き換えたり,フライアッシュ(石炭の燃焼で生じる細かな灰)やスラグ(鉱滓)などの廃物に置き換えることで排出を減らせることが実証試験で示された。これらの代替材料の供給量には限りがあるが,ある程度のCO2削減が可能だ。

その他の代替材料や製法によって排出をかなり減らすことができる。いくつかはすでに実用化し,その他は実験段階だ。セメントとコンクリートは大部分が最終的に使われる現場の近くで作られるので,実践には代替材料の入手可能性を高めること,それらの利用を認めるよう建築基準を改めること,設備改修の資本コスト,市場の受容性のすべてが課題となる。



続きは日経サイエンス2023年4月号にて

再録:別冊日経サイエンス262『気候危機と戦う 人類を救うテクノロジー』

著者

Mark Fischetti

原題名

Concrete Cure(SCIENTIFIC AMERICAN February 2023)

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