日経サイエンス  2023年4月号

鳥は鳥の歌をどう聞いているか

A. フィッシュバイン(カリフォルニア大学サンディエゴ校)

鳥の歌を聞くと,私たち人間はそれが音楽や言語と似ていると考えずにはいられない。ウタスズメの歌にはチチチ,ヒューという音をつなぐ独特のメロディーがあり,ハゴロモガラスの発声には文章に似た構造が含まれ,ノドジロシトドの歌は陽気な口笛のように聞こえる。 

鳥の歌はアリストテレスの時代から科学者の興味を引きつけてきた。鳥の歌は昔から,交尾相手の誘引と縄張りの防衛のために鳥が発する長くて多くは複雑な音声で,学習を通じて獲得されたものと定義されてきた。現代の研究者は鳥の歌を「地鳴き」と区別している。地鳴きは歌(さえずり)よりも一般に短く単純で鳥が生まれながらに知っている鳴き声で,捕食者や食物の存在を伝えるなど,もっと多様な機能を果たしている。この区分は決して明確ではない。例えば一部の鳥の歌は地鳴きよりも単純だ。だがこの記事で以下に扱う「鳥の歌」とは,チッとかピーといった短い音とは対照的な,長くて複雑な音のことだ。

鳥の歌について述べる際,研究者と一般人はともに同様の言葉を使っている。このこと自体,鳥の歌が人間に音楽や言語のように聞こえていることの表れだ。用語について少し詳しく説明すると,私たち研究者は通常,鳥の歌を「音素」または「シラブル(歌要素)」という小さな単位に分解して解析する。そして一続きの複数のシラブルを,特徴的なリズムとテンポを備えた「フレーズ」または「モチーフ」にまとめて扱う。このようにして,鳥の歌に含まれているシラブルの種類の数や,フレーズが配置されるパターンなど,重要だと考えられる特徴を把握する。こうした記述法もまた,私たちが文を構成する単語どうしの関係や楽曲中の音符どうしの関係を示す方法とよく似ている。

しかし,鳥はこうした特徴をどのようにとらえているのだろうか? 鳥の歌は鳥にどう聞こえているのか? 私たちのチームを含め世界中の科学者の近年の研究から,鳥と人間では鳥の歌の音列の聞こえ方が違うことがわかった。加えて,鳥が最も注意を払っているのは人間の耳をとらえるメロディーではなく,歌の個々の音素に含まれている人間には知覚できない微細な音響的特徴であるようだ。 



続きは日経サイエンス2023年4月号にて

著者

Adam Fishbein

カリフォルニア大学サンディエゴ校のポスドク研究員。動物の社会的交流の認知的・神経的基盤を研究している。

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鳴き鳥の多様化の秘密」,K. ウォン,日経サイエンス2020年3月号。 「高精度ナビの仕組み 鳥には地磁気が見えている」,P. J. ホア/H. モウリットセン,日経サイエンス2022年8月号。
鳴き声の進化 それは虫の声から始まった」,M. B. ハビブ,日経サイエンス2023年1月号。

原題名

How Birds Hear Birdsong(SCIENTIFIC AMERICAN May 2022)

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