日経サイエンス  2023年3月号

「人に乗った馬」を描けないAI なんでもできそうなAIの現実

G. マーカス(科学者・著述家)

一般人の目には,人工知能(AI)の分野が長足の進歩を遂げているように見えるに違いない。一部の大げさな報道や発表資料によれば,オープンAIの「DALL-E2」はあらゆる文章をもとに目を奪うような画像を生成できるようだ。また,同社の「GPT-3」という別のシステムは,どんな事柄も語ることができ,自分自身について執筆することまでできる。そしてアルファベット(グーグルの持ち株会社)傘下のディープマインドが去る5月に発表した「Gato」というシステムは,同社が与えたあらゆる課題をうまく処理したと伝えられている。ディープマインドのある上級幹部は,人間と同様の柔軟で機転の利く「汎用人工知能」の実現という目標について,問題は「すでに決着ずみだ」とまで豪語した。

だまされてはいけない。機械はいつの日か人間並みあるいは人間以上に賢くなるかもしれないが,決着ずみには程遠い。周囲の世界を本当に理解してそれについて推論できる機械を作るには,まだ課題が山積みだ。いま私たちに必要なのは,見せかけの芝居を控え,基礎研究にもっと力を入れることだ。

AIは確かに進歩している。合成画像はますます本物らしくなり,音声認識は騒音下でも機能するものが多くなった。しかし,文章やビデオの真意を理解したり予期せぬ障害や妨害に対処できる人間レベルの汎用的なAIの登場は,まだ何十年も先だと思われる。この分野は,学術界の科学者(私を含む)が長年指摘してきたのとまったく同じ課題にぶつかって行き詰まったままだ。AIに信頼性を持たせ,異例な状況に対処できるようにするという課題だ。


続き2023年3月号でどうぞ。

著者

Gary Marcus

科学者で著作家,起業家でもある。近著はデイビス(Ernest Davis)との共著「Rebooting AI」(Vintage, 2019年)。

原題名

Artificial Confidence(SCIENTIFIC AMERICAN October 2022)

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