
すっかり寒くなった。間瀬真知香(ませ・まちか)が熱いルイボスティーで喉を潤していると,高1の何戸家夏太(なんとか・なつた)と姉の奈留沙(なるさ)が弾けるような笑い声を上げながら入ってきた。
「おはようございます!」
「おはようございます。今日は『充填』について見ていきましょう」
◎円筒を積む
「土管のような円筒形のものを積むとき,よくこんなふうにしますね」と真知香は実際にやってみせた。
「俵積み,といいます。トイレットペーパーの半径を1とすると,2段分の高さはいくつになりますか」
「トイレットペーパーの中心を結ぶと,辺の長さが2の正三角形になります。三平方の定理から,三角形の高さは 3だとわかります」と,奈留沙が図を描いてみせた。
「上と下に1ずつ足して,高さは2+3≒3.73です」
「その通り。俵積みを横から見ると,平面に円を隙間なく並べるときと同じ形になっています。俵積みが最も隙間が少なく効率よく積める方法であることが証明されています」
真知香はそう説明し,もう1段積んだ図を描いた。
「あ,これ学校で習った。最密充填ってやつだ」と夏太。
「はい,そうです。この並べ方の基本パターンは青で示した三角形で,このパターンで全体を敷き詰めることができます。この三角形に円はいくつ入っていますか?」
続きは日経サイエンス2023年2月号にて
登場人物
何戸家 夏太(なんとか・なつた)高校1年生
何戸家 奈留沙(なんとか・なるさ)夏太の姉。高校2年生
間瀬 真知香(ませ・まちか)フリーの実験数楽者