
京都の町並みを一望する東山三十六峰の1つ,清水山(きよみずやま)のすぐ隣の花山山(かざんやま)に,京都大学の前身である京都帝国大学が昭和4年(1929年)に創設した花山天文台がある。当時の主要な建物と望遠鏡は現存し,研究機能を維持しつつ,天文遺産として後世に残す取り組みが進んでいる。その100年の伝統の礎は初代台長となった個性豊かな天文学者,山本一清(いっせい,旧名かずきよ)によって築かれた。(文中敬称略)
京都帝国大学に国内2番目となる天文学専修コースとして宇宙物理学科を創設し,花山天文台の建設を主導したのは新城新蔵だ(本連載第40回)。新城は東京帝国大学で物理学を専攻したが,京都帝国大学助教授時代のドイツ留学で天文学への転身を決意する。その新城のもとで天文学を本格的に学んだ最初の学生が山本だった。
続きは日経サイエンス2023年2月号にて