日経サイエンス  2023年2月号

インタビュー企画

科学を楽しむ達人たち

聞き手:出村政彬/遠藤智之(編集部)

「科学」の二文字を見ると反射的に学校の理科や数学の時間を思い出し,堅苦しい印象を持つ人は少なくないはずだ。しかし本当のところ,科学は学校の勉強だけに留まらない。生活の中で「ふしぎ!」「面白い!」と感じる好奇心と,科学は地続きの関係にある。ウェブとSNSが発達し,さまざまな発信方法が可能になった今,自然体で科学を楽しむ人たちが増えている。科学の楽しみ方を発信したり,楽しむ場を生み出したりしている人たちを,私たち編集部は科学を楽しむ「達人」と呼ぶことにした。達人たちへのインタビューから,肩肘を張らずに科学を楽しむ新しい方法や,楽しさを多くの人と共有する方法が見えてくる。





昆虫づくしの「理想の大学」  メレ山メレ子さん(「昆虫大学」学長)
植物園の「パンダ」になる  宮内元子さん(水戸市植物公園)
「熱い化学好き」が集う場所  山口潤一郎さん(「ケムステ」代表)
CERNで宇宙芸術に挑む  田中ゆりさん(CERN・京都市立芸術大学)
科学と料理のマリアージュ  平松サリーさん(科学する料理研究家)
「応援」が研究者のビジョンを磨く  柴藤亮介さん(アカデミスト株式会社)
STEMS教育で創る喜びを  中島さち子さん(株式会社steAm)

続きは日経サイエンス2023年2月号にて

メレ山 メレ子
会社員として働きつつ,虫の魅力をプロに教えてもらうイベント「昆虫大学」を2012年から不定期開催。2022年7月には都内で5回目となる「昆虫大学2022」が開かれ,研究者の講演や作家の作品展示,グッズ販売をお目当てに1000人以上が集まった。文筆業も手掛け,著書に『ときめき昆虫学』(2014年,イースト・プレス)などがある。

宮内 元子
渋谷区ふれあい植物センター元園長の宮内さんが発信するTwitterアカウント( @fureai_miya)には,1万人を超える植物好きが集まる。長期休園の喪失感を糧に,新天地の水戸市植物公園でも植物園の水先案内人として国内外の情報を届け続けている。

山口 潤一郎
最新研究の解説,化学用語データベース,海外研究生活の体験談など化学の情報を広く集めたポータルサイト「Chem-Station(ケムステ)」を20年以上運営。2000年に同サイトを立ち上げた当時は東京理科大学の学部生で,2007年に東京理科大学大学院博士課程を修了。博士(工学)。現在は早稲田大学教授で,専門は有機化学。

田中 ゆり
欧州原子核研究機構(CERN)で宇宙芸術に挑む田中さんは,芸術監督として科学者と芸術家をつなぎ,両者の対話の中から作品を生み出している。国内外の芸術祭やイベントに携わりながら,未知なる宇宙の表現を探り続けている。

平松 サリー
料理研究家の平松さんは,科学の視点からレシピの開発やコラムの執筆を手掛ける。簡単に失敗なく作れるお役立ち情報のほか,子どもに科学の楽しさを体験してもらうヒントを届けている。身近な料理だからこそ「科学の目」の大切さを痛感しているという。

柴藤 亮介
一般の個人が研究者の活動を支援できる研究費クラウドファンディングサイト「academist(アカデミスト)」を2014年に立ち上げた。これまでに約250件のファンディングが成立し,総額2.2億円の研究資金が集まっている。2013年に首都大学東京大学院理工学研究科物理学専攻博士後期課程を単位取得退学。大学院時代の専門は理論物理学だった。

中島 さち子
ジャズピアニスト・数学研究者・メディアアーティスト――多彩に活躍する中島さんは「創造性の民主化」を合言葉に,steAm社を立ち上げて創る喜びを伝えている。科学を楽しむ秘訣は,自分なりの「好き」と結びつけることだという。