日経サイエンス  2023年1月号

nippon天文遺産 第40回

京都帝国大学花山天文台(上)

中島林彦(編集部) 協力:渡部潤一(国立天文台)/柴田一成(京都大学)

京都の三条通は江戸時代の東海道だ。三条大橋から東山に向かい,南禅寺を訪れる観光客で賑わう蹴上(けあげ)を過ぎると,道は急な上り坂になる。京都盆地と山科盆地を分ける峠道だ。少し進んで本道から分かれて右に折れ,東山三十六峰の稜線近くに沿って南に向かう山道に入り,しばらく行くと京都大学花山(かざん)天文台に至る。約100年前の昭和4年(1929年),京都帝国大学(京都大学の前身)の新たな天文観測拠点として開設された。中心施設となる2つの天文ドームは当時と変わらぬ姿で山中にたたずんでいる。(文中敬称略)

花山天文台の生みの親は京都帝国大学における天文学研究の始祖,新城新蔵だ。東京帝国大学で大学院まで学んだが,天文学を扱う星学科ではなく物理学科で,研究者の道を歩み始めた当初は国内・朝鮮半島各地で重力と地球磁場の測定に精力的に取り組み,地球物理学のパイオニアとして活躍した。

続きは日経サイエンス2023年1月号にて

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