
陸上も海中も,地球上のあらゆる場所が動物たちが出す音であふれている。少なくとも2億5000万年前には昆虫が鳴き始めたことがわかっており,この頃から脊椎動物も盛んに音を出すようになったようだ。さらに私たちヒトは,700万年前から始まった人類の歴史のどこかの時点で,言葉を話す動物へと進化を遂げた。
のどの声帯や舌など,発声に関わる器官は化石に残りにくい。しかし骨の内部を詳しく解析したり,現代のヒトと霊長類の発声器官の形を丁寧に比べたりすることで,声の進化がどんな道筋を辿ってきたかが少しずつ見えてきた。動物の鳴き声からヒトの話し声,そして豊かなオペラの歌声に至るまで,様々な「声」を発声器官の研究から捉え直す。
人間だけがおしゃべりな理由 のどが秘める意外な能力 出村政彬
鳴き声の進化 それは虫の声から始まった M. B. ハビブ