日経サイエンス  2022年7月号

数楽実験室 マテーマティケー 第6回

屈折を考える

図と解説:矢崎成俊

間瀬真知香(ませ・まちか)はティーカップを用意し,その横に木でできた手のおもちゃ,綿棒,ビールのジョッキなどを並べた。何かの実験が始まるようだ。そこへ高校生の何戸家夏太(なんとか・なつた)と姉の奈留沙(なるさ)が勢いよくドアを開けて入ってきた。

「おはようございます!」
「おはようございます。あ,ちょっとそこで止まって」

真知香が声をかけ,2人は怪訝そうな顔で立ち止まった。

「このティーカップの中には何が入っていますか」

そう言って真知香は手のおもちゃでカップを示した。

「何って……,何も見えません」と2人は顔を見合わせる。


◎見えないものが現れる
「では,これでどうでしょうか」
真知香は木の人さし指の先がつかるくらいまで水を入れた。

「あ,見えてきました」と奈留沙が声を上げ,夏太もじっと見つめている。
「はい,10円玉が見えましたね。今日はこんなふうに,ものの見え方を調べてみましょう」


◎消えた500円玉
真知香は2人に近くに来るよう促した。そして10円玉と500円玉を取り出し,10円玉をジョッキの中,500円玉をその外に置いた。

そして,ジョッキを500円玉の上に乗せた。

「ジョッキの中に10円玉,ジョッキの下に500円玉がありますね。ここに水を注いでいきます」
2人は固唾を飲んで見守っている。
「さて,どうですか」

「あっ,500円玉が見えなくなりました!」と奈留沙。
「でも,10円玉は見えています」と夏太。

真知香は微笑んだ。
「そうですね。これは一体なぜでしょうか」


続き日経サイエンス2022年7月号にて

登場人物
何戸家 夏太(なんとか・なつた)高校1年生
何戸家 奈留沙(なんとか・なるさ)夏太の姉。高校2年生
間瀬 真知香(ませ・まちか)フリーの実験数楽者

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