
全国公開中の映画『シン・ウルトラマン』では人類とウルトラマンが,地球侵略を目論む外星人と熾烈な戦いを繰り広げる。その作品世界は最先端の物理学をベースにイメージを膨らませて創造された。作中で示される物理概念で,物語を駆動するキーコンセプトになっているのが「プランクブレーン」だ。
プランクブレーンは,人類が天体望遠鏡で観測したり実験装置で調べたりできる宇宙とは別の宇宙のこと。私たちにとって3次元空間の宇宙は唯一無二だが,『シン・ウルトラマン』の作品世界では宇宙はたくさん存在している。宇宙は本当は3次元よりも次元の数が多い高次元空間であり,その中に3次元空間部分がいくつも存在している。その1つが私たちが認識する3次元の宇宙であり,プランクブレーンもそうしたものになる。「高次元宇宙」と呼ばれるモデルの一例だ。
素粒子物理学の「超弦理論」によれば,現実世界も高次元宇宙であって,プランクブレーンが実在する可能性がある。映画制作に協力した京都大学の橋本幸士教授の協力を得て,『シン・ウルトラマン』の作品世界を深掘りするとともに,その背景にあるSFのような超弦理論の研究最前線を紹介する。
協力:橋本幸士(はしもと・こうじ)
京都大学教授(大学院理学研究科物理学・宇宙物理学専攻)。専門は素粒子論,特に超弦理論を研究している。エッセイの名手で,毎年出版されている日本文藝家協会編の『ベスト・エッセイ』(光村図書出版)に作品が選ばれたこともある。一般向けの近著は『物理学者のすごい思考法』(インターナショナル新書)。写真は橋本の研究室で撮影。
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