日経サイエンス  2022年10月号

特集:深海 新発見

世界の海の解剖図

M. フィシェッティ(SCIENTIFIC AMERICAN編集部)

「海 深さ区分」などをキーワードにウェブ検索すると,海の垂直断面図がたくさん見つかるだろう。いちばん上の薄い層は「有光層」あるいは「海面表層」と呼ばれ,植物プランクトンや藻類,一部の細菌が光合成を行うのに十分な光を受けている。その下の「トワイライトゾーン」では光が薄れるが,一部の動物はまだ見ることができる薄暗さであり,多くの動物は生物発光によって自ら光を生み出している。その次が計測可能な光がまったくない「ミッドナイトゾーン」で,さらにその下に厳しい低温の「深海層」が続く。そして最後が信じがたい深さの海溝に至る「超深海層」だ。英語ではヘイダルゾーン(hadal zone)と呼ばれ,これはギリシャ神話の冥府の神ハデスにちなんだ名称だ。 

この標準的な見方では,光の量と,水深に従って一律に増える水圧によって,そこにどんな生物が生息しているかがほぼ決まる。これらの要因は重要だが,ほかにも水温や塩分濃度,海水に溶けている酸素と窒素の量,海流の変化もまた重要だ。世界中で集められたデータから,海の動態と海洋生物が以前に考えられていたよりもはるかに複雑であることが明らかになった。調査を進めるほど,新たな驚きの発見がある。

続きは2022年10月号にて

著者

Mark Fischetti

原題名

Dynamic Seas(SCIENTIFIC AMERICAN August 2022)

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