日経サイエンス  2022年9月号

特集:再来する感染症の脅威

編集部

5月に英国で感染者が見つかって以降,サル痘の流行は現在も拡大の一途を辿っている。サル痘はアフリカ大陸内で数十年にわたって流行してきた感染症だが,世界規模で流行するのは今回がはじめてだ。サル痘と天然痘の病原体は近縁で,サル痘ウイルスは人から人へと感染を続けるうちに,過去に天然痘ウイルスが起こしたのと同様の進化を起こす恐れがある。流行初期にあたる今のうちに拡大を食い止めることが重要だ。今年はオーストラリアで初の日本脳炎の流行が発生し,ブラジルで大規模なデング熱の流行が起こるなど,人獣共通感染症との戦いが世界各地で同時進行中だ。人獣共通感染症の流行がなぜ繰り返し起こるのかを生態学の視点で分析し,対策につなげようとする新たな動きもある。



第2の天然痘になるか 広がるサル痘  出村政彬
先進国で意外な増加 日本脳炎・デング熱・マダニ感染症  出村政彬