
全世界がパンデミックや気候変動がもたらす災害に見舞われている今,ソーシャルキャピタルという概念の重要性が高まっている。ソーシャルキャピタルとは,互いを信頼して積極的に人間関係やネットワークを構築して社会の問題を解決し,生き延びる能力のことだ。日本語では「社会関係資本」と訳されることが多い。
メディアだけでなく専門家までもが,相互の信頼や助け合いといった行動は経済的な余裕がなければ生まれないと決めつけている。しかし実際には,貧困に陥ったり差別を受けたりしている人々の間でもこうした行動は日常的に見られるものだ。アメリカの黒人社会は経済的・社会的に長らく逆境におかれてきたが,人々の間には助け合いの伝統がしっかりと根付いている。彼らは豊かなソーシャルキャピタルを生み出している。
逆境のなかからどのように相互扶助の精神が生まれるのか,心理学の側面から研究が進みつつある。世界が不安定化していく今,アメリカの黒人社会は変化や不測の事態に強い強靭な社会を作るためのヒントとなる。
続きは日経サイエンス2022年8月号にて
著者
Nancy Averett
オハイオ州シンシナティを拠点に,環境科学や社会科学をテーマに執筆しているライター。著作物はAudubon誌,Sierra誌,Discover誌などに掲載されている。
原題名
Social Resilience(SCIENTIFIC AMERICAN October 2021)
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ソーシャルキャピタル/社会関係資本/持続可能性/自由アフリカ協会