日経サイエンス  2022年8月号

緊急解説:天の川銀河中心 ブラックホール 撮影成功

遠藤智之(編集部) 協力:森山小太郎(独ゲーテ大学フランクフルト) 小山翔子(新潟大学) 本間希樹(国立天文台)

「これが私たちの住む天の川銀河中心にあるブラックホールの姿です」。2022年5月12日午後10時過ぎ,独ゲーテ大学フランクフルトの森山小太郎研究員が緊張した手つきでスクリーンに映し出したのは,少し濃淡があるオレンジ色のリングに縁取られた,真っ黒なブラックホールシャドウだった。巨大ブラックホール「いて座Aスター」が光を吸い込み,浮かび上がった巨大な影だ。リングは周辺のガスが放出する電波などの放射をオレンジ色に画像化したものだ。

発表したのは,世界300人を超える研究者が参加する「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」の国際共同研究グループだ。世界各地の電波望遠鏡を連動させて,月面のゴルフボールが見えるほどの視力を実現。2019年には初めて巨大ブラックホールの撮影に成功した。今回は2例目になるが,短時間で見た目が変わってブレやすく,星間散乱の影響で画像がぼやけてしまう問題が立ちはだかっていた。2017年の観測から5年,渾身の1枚を実現したのは,日本チームも貢献した画像解析技術の進化だった。その舞台裏を紹介する。

協力 森山小太郎(もりやま・こたろう)/小山翔子(こやま・しょうこ)/本間希樹(ほんま・まれき)
3人はEHTの日本チームのメンバー。代表の本間は国立天文台教授。小山は新潟大学助教。森山はゲーテ大学フランクフルトの研究員。

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ブラックホール撮影成功」,中島林彦/協力:本間希樹・秦和弘・田崎文得,日経サイエンス2019年7月号。別冊日経サイエンス241『巨大ブラックホール』に収載。

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