日経サイエンス  2022年8月号

特集:渡り鳥の量子コンパス

 渡り鳥は遠く離れた繁殖地と越冬地の間を毎年往復している。鳥たちは太陽や星に加え地磁気をナビゲーションに利用していることが知られているが,その仕組みは長年不明だった。最近の研究で,鳥の眼の中では光化学反応によって「ラジカル対」という短寿命の分子ペアが形成されており,鳥のコンパスはこのラジカル対に生じる量子的な効果に依存している可能性が高いことが示された。どうも,鳥たちは地球の磁力線を“見る”ことができるようだ。さらに近年,地磁気を感知するタンパク質が,渡り鳥だけでなく蝶やクジラにも存在することがわかってきた。磁気を感知する能力は,多くの動物が持つ一般的な感覚なのかもしれない。

高精度ナビの仕組み 鳥には地磁気が見えている
  P. J. ホア/ H. モウリットセン
動物たちの磁気感覚  出村政彬

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