
天文学は天の川銀河の領域をはるかに越え,100億光年以上先を見る時代になったが,20世紀半ばにおいては地球のすぐ近くの宇宙の観測も重要な位置を占めていた。日本でその観測拠点となったのが東京大学東京天文台(国立天文台の前身)が秩父山地の堂平(どうだいら)山頂(876m)に開設した堂平観測所だ。流星や人工衛星,月,彗星などを観測する各種の施設が口径91cm望遠鏡の天体観測ドームの周囲に置かれていた。 (文中敬称略)
「堂平は流星や彗星の観測研究を始めるきっかけとなった思い出深い場所だ」と国立天文台上席教授の渡部潤一は話す。太陽系小天体の研究で知られ,本連載の協力者でもある渡部が最初に堂平を訪ねたのは約40年前,東京大学天文学科の学生時代だった。
続きは,日経サイエンス2022年6月号にて