
時空は量子もつれから創発する(2022年6月号「創発する時空」)。と言われても,どういう話なのか想像もつかない,という人は多いだろう。
量子もつれといえば,互いに遠く離れた光子や電子どうしの性質が連動して変化する不思議な繋がりのことだ。量子情報科学の中核となる性質で,量子コンピューターの開発では,素子どうしを量子もつれにするのに苦心している。
一方の時空,つまり時間と空間は,日常感覚ではそこに存在するのが当然の普遍的なものだ。それが量子もつれのように特殊なものから生まれるというのは,にわかに納得しにくい。
だが量子もつれからの時空の創発は今,最もホットなテーマの1つである。北米では2015年,量子情報と超弦理論の研究者がこの分野を共同研究するプロジェクト「It from Qubit」が立ち上がった。日本政府は2021年度,「万物は量子情報から構成されるという新しい視点で極限宇宙の解明を目指す」ことを掲げ,学術変革領域研究「極限宇宙の物理法則を創る」を始動した。
量子もつれから時空が創発するとはどういうことなのか。その発想はどこから生まれ,なぜ注目されているのか。極限宇宙プロジェクトのアドバイザリーを務め,相対論と量子情報科学の両方に詳しい物理学者の細谷曉夫氏に,根掘り葉掘り聞いてみた。
続きは日経サイエンス2022年6月号にて
細谷曉夫(ほそや・あきお)
東京工業大学名誉教授。専門は素粒子物理学,相対性理論,量子情報科学。東工大を退職後,3つの大学で教え,地域のサイエンスカフェで宇宙と物理学を教えている。著書に『時空の力学 一般相対論の物理』(岩波書店)など。
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