
新型コロナウイルス感染症のワクチン3回目接種が日本でも本格的に始まった。2月14日の時点で1100万人以上が3回目の接種を終えている。ただ,昨年の春から始まった1・2回目接種の頃と比べて3回目の接種を取り巻く状況は複雑だ。世界中で,従来のワクチンで獲得した免疫を回避する変異ウイルスのオミクロンが流行している。3回目の接種は,オミクロンに対し果たしてどれだけ効果があるのだろう?
3回目接種の効果については,先行する英国や米国から効果と安全性に関するデータが報告されるようになってきた。3回目接種が済んだ人の血液を採取し,体内でどのような免疫ができているかを調べる研究も進む。3回目接種のポイントはどうやら免疫の「幅の広さ」にあるようだ。3回目接種はただ抗体の量を増やすだけに留まらず,抗体の質そのものを変化させ,幅広い変異ウイルスに対処できる免疫を獲得するのに役立つ可能性がある。
また,4回目以降の追加接種についてはどのように考えればよいだろうか。今回,各国で2回目の接種から3回目までの間隔はバラバラだった。半年の間隔を空けた国もあれば,3カ月で接種した国もある。今後の追加接種の間隔と,そこで用いられるべきワクチンの種類についても現時点の知見を基に掘り下げる。ここでも「幅広い免疫」を作れるワクチン接種を考えることが大切だ。
この他,本記事では現在国内で接種できるファイザー製とモデルナ製の追加接種にどのような違いがあるのかについても,効果と安全性の両面から整理する。
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「新型コロナ 変異ウイルスといかに戦うか」,出村政彬,日経サイエンス2021年11月号。