日経サイエンス  2022年4月号

特集:スーパーフレア

進化する宇宙天気予報 ネットワーク社会の崩壊を食い止める

吉川和輝(日本経済新聞) 協力:草野完也(名古屋大学宇宙地球環境研究所)

総務省の「宇宙天気予報の高度化の在り方に関する検討会」での議論が始まった。太陽で起こる巨大な「太陽フレア」(太陽面爆発)が主因となって,地球に影響が及ぶ「宇宙天気現象」の予報・警報体制を強化するとともに,人間社会への影響の大きさを見積もるのが目的だ。

電力システムやデジタル社会を支える通信・放送施設,あるいは宇宙空間での活動に深刻な影響を及ぼす「宇宙天気災害」の引き金となるのはフレアだ。宇宙天気災害のリスクが高まる中で,巨大フレアの発生予測など,宇宙天気予報の重要性が高まっている。

現状では,宇宙や地上からの観測でフレア発生を検知した時には,フレア由来のX線などがすでに地球に到達してしまっている。このため,大きなフレアの発生を先回りして予測する意味は大きい。検討会の座長でもある名古屋大学宇宙地球環境研究所の草野完也所長らは巨大フレアをその発生位置まで正確に予測できる手法を開発した。従来,フレアの発生予測は黒点の大きさや形,活動領域の磁場の形態などの観察をもとにした,経験的な方法が主にとられていた。これとは一線を画し,独自開発したフレアの物理モデルで予測を試みている。

再録:別冊日経サイエンス258『激動の天と地』

著者

吉川和輝

日本経済新聞社編集委員。1982年入社,産業部,ソウル支局などを経て科学技術部記者に。米マサチューセッツ工科大学で科学ジャーナリズムを学んだ。2012〜2015年に日経サイエンスの発行人を務めた。現在はエマージングテクノロジー,物理学,宇宙開発,デジタル社会などのテーマで執筆している。

協力 草野完也(くさの・かんや)
名古屋大学宇宙地球環境研究所長。太陽フレアとコロナ質量放出の発生機構などを研究。総務省「宇宙天気予報の高度化の在り方に関する検討会」の座長を務める。

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