日経サイエンス  2022年4月号

特集:スーパーフレア

けた外れの太陽面爆発

J. オカラガン(フリージャーナリスト)

時として太陽で激しい「太陽フレア」(太陽面爆発)が起こり,地球に大混乱をもたらすことがある。そのような爆発現象と地球への影響を調べている科学者たちは150年以上の間,その最たる例と思われる1つの太陽嵐に注目してきた。

1859年に起こった「キャリントン・イベント」だ。太陽での爆発が地球にパンチを食らわした。大量のプラズマ(電離ガス)が地球の磁気圏に注入されて大規模な磁気嵐が発生し,見事なオーロラ・ショーが展開されただけでなく,電信線で火花が散って電報システムがダウンした。この磁気嵐は,当時の電気通信に限定的なダメージを与えただけの奇妙だが大したことのない不都合と受け止められた。だが現在,キャリントン・イベントや同程度の規模だった1921年の太陽嵐は,将来の大惨事を警告する不吉な出来事であると考えられている。

さらにひどい太陽嵐が起こりうることを示す最初の証拠は2012年に得られた。キャリントン・イベントをはるかに上回る規模のメガストームが775年頃に発生していたことがわかったのだ。この古代のメガストームをもたらしたのは近代的な太陽観測が始まって以来,一度も捉えられたことがない「スーパーフレア」だったと推測した。そんなスーパーフレアが現代のグローバルネットワーク社会を直撃すれば,壊滅的な結果を招くだろう。

再録:別冊日経サイエンス258『激動の天と地』

著者

Jonathan O'Callaghan

フリージャーナリスト。商業宇宙旅行や宇宙探査,宇宙物理学などをテーマに執筆している。

原題名

The Threat of Solar Superflares(SCIENTIFIC AMERICAN December 2021)

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