日経サイエンス  2022年3月号

nippon天文遺産 第34回

旧東京天文台堂平観測所(上)

中島林彦(編集部) 協力:渡部潤一(国立天文台)/大島紀夫(堂平天文台・元国立天文台)

関東平野の西縁に当たる埼玉県中部の丘陵地帯から秩父山地の林道に入る。車で30分ほど登ると視野が一気に広がり,冬晴れの空の下,60年の風雪に耐えてきた古風な天体観測ドームが姿を現した。関東平野を一望する,ここ堂平(どうだいら)山頂(876m)には東京大学東京天文台(国立天文台の前身)が建設し,国立天文台に引き継がれた堂平観測所があった。昭和の半ばから平成の半ば近くまで日本の天文学を支えてきた施設群は約20年前にほとんど取り壊されたが,観測所のシンボルだった天文ドームとその主である口径91cm望遠鏡は残され,地元,埼玉県ときがわ町が運営する「堂平天文台」として人々に親しまれている。(文中敬称略)

堂平観測所は第二次世界大戦で大打撃を受けた日本の天文学の復興期に開設された。

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