
米国とロシア,中国がマッハ5を超えるスピードで巡航飛行し迎撃や阻止が困難とされる「極超音速兵器」の開発と配備を競っている。北朝鮮は先ごろ発射したミサイルがこの部類だと主張している。計画の推進者たちは極超音速兵器が信じられないほど高速・機敏で,事実上不可視だという。しかし,著者ら独立系科学者の調査研究によると,極超音速兵器はいくつかのシナリオでは優位になるかもしれないが,決して革命的なものではない。物理学的な理由から極超音速兵器は宣伝されているような機能を発揮できない。開発を続けても,いたずらに緊張を高めるだけだ。
再録:別冊日経サイエンス251『「戦争」の現在 核兵器・サイバー攻撃・安全保障』
著者
/ Cameron Tracy
ライトはマサチューセッツ工科大学の核安全保障・政策研究所に所属する研究者。以前に「憂慮する科学者同盟」で世界安全保障プログラムを率いていた。トレイシーは憂慮する科学者同盟の世界安全保障フェロー研究者。工学と物質科学に基づいて極超音速兵器と核廃棄物管理を研究している。
関連記事
「核ミサイル防衛 米国の幻想」,L. グレゴ/D. ライト,日経サイエンス2019年9月号。
原題名
Overhyped(SCIENTIFIC AMERICAN August 2021)
サイト内の関連記事を読む
キーワードをGoogleで検索する
弾道弾迎撃ミサイル制限条約/極超音速/弾道ミサイル/巡航ミサイル/ブースト・グライド/抗力/揚力/揚抗比/最小エネルギー軌道/ディプレスト軌道/機動再突入体(MaRV)/迎撃ミサイル