
原子核中の3つの陽子や中性子の間に「三体力」が働くことを実証
原子核の様々な性質のほか,中性子星などにも関係すると注目を集めた
三体力の詳しい解明を目指した実験に意欲を燃やす
原子核の内部では,陽子と中性子を固く結びつける「核力」と呼ぶ力が働く。この力の起源を説明するために,湯川秀樹は中間子が陽子と中性子の間でやりとりされるという「中間子論」を提唱した。21世紀に入ると,核力に対する理解は大きく変わった。2つの陽子や中性子に働く核力だけでは原子核に起こる様々な現象を説明できず,もう1つ加えた「三体力」が注目されている。東北大学准教授の関口仁子は三体力の存在を加速器による実験で証明した。原子核や宇宙の謎の解明に意欲を燃やす。 (文中敬称略)
関口仁子(せきぐち・きみこ)
東北大学准教授。1973年埼玉県生まれ。1997年東京大学理学部卒業,2002年同大学院理学系研究科博士課程修了。理化学研究所研究員,同仁科加速器科学研究センター研究員などを経て,2010年から現職。専門は原子核物理学。2007年国際純粋・応用物理学連合(IUPAP)のヤングサイエンティスト賞のほか,文部科学大臣表彰・若手科学者賞や湯浅年子賞銀賞などを受賞。