日経サイエンス  2022年1月号

特集:地球防衛

100年に1回の衝突を見逃さない

中島林彦(編集部) 協力:奥村真一郎(日本スペースガード協会) /酒向重行(東京大学) /吉川 真(宇宙航空研究開発機構)

地球に近づく軌道を持つ「地球接近小惑星」の衝突を回避する取り組み,「地球防衛」の歴史に新たなページを加える日本独自のプロジェクトが始動した。天球上を高速で動く,言い換えれば地球のかなり近くを飛んでいる小惑星を,これまで捕捉するのが難しかった暗い小さなものまでリアルタイムで検出。ほぼ即座に追跡観測して,その軌道を割り出し,危険性を評価する。100年から数百年に1回の頻度で地球に飛来し,大都市に落ちれば壊滅的な被害が出る直径数十mの地球接近小惑星は大部分が未発見とみられている。それらを多数あぶり出せる。

「2021年9月に初の試験観測を実施した。さらに試験を重ねて課題を洗い出すとともに,観測データの解析システムを拡充したい。計画がうまく進んで本格的な運用が始まれば,直径数十mクラスはもちろん,それらよりさらに数が多く,衝突頻度が30年に1回程度の直径10mを切るサイズのものまでカバーできる。宇宙の監視体制は大幅に強化されることになる」と日本スペースガード協会の理事長を務める天文学者の奥村真一郎は話す。

地球防衛に関連した小惑星探査ミッションでは,日本はすでに大きな存在感を示している。小惑星「イトカワ」と「リュウグウ」が「はやぶさ」と「はやぶさ2」によって探査され,太陽系と生命の起源の研究に大きな弾みがついたが,両天体はもし落ちてきたら人類を絶滅の淵に追いやる直径数百m~1kmサイズの地球接近小惑星だ(ただ,これらが少なくとも100年かそれより先まで,地球に衝突する可能性がないことは確認されている)。

著者

中島林彦 / 協力:奥村真一郎 / 酒向重行 / 吉川 真

中島は日経サイエンス編集委員。奥村は日本スペースガード協会理事長。JAXA美星スペースガードセンターで地球接近小惑星の観測と研究に取り組んでいる。酒向は東京大学准教授(大学院理学系研究科附属天文学教育研究センター)。専門は光赤外線時間軸天文学,天文用装置開発。東京大学木曽観測所でトモエゴゼンを用いた観測に取り組んでいる。吉川はJAXA宇宙科学研究所准教授。はやぶさ2ミッションマネージャ。専門は天体力学。小惑星や彗星など太陽系小天体の研究に取り組んでいる。

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