
1930年代に米国中西部を襲った砂嵐「ダストボウル」は土壌劣化が招く破滅的な結果を世に示した。それまでの数十年に及ぶ農耕によってグレートプレーンズ(中西部の大平原)の肥沃な土が剥ぎ取られ,干ばつの影響を受けやすくなっていた。猛烈な風が地面から土煙を巻き上げ,大気は埃まみれになり,大地は不毛の荒野と化した。飢えや肺の病で何千もの命が失われ,生き延びた者の多くは食物と仕事,きれいな空気を求めて西へ移住した。
今日の私たちは再び極度の土壌侵食の脅威に直面しており,今回は気候変動のせいで深刻度が増している。食料供給と地球の健康の両方が脅かされるという未曾有の危機だ。だが,この破局的結末を回避する立役者となりうる人々がいる。農家だ。手軽な手法によって土壌にもっと多くの炭素を組み込むことで,土壌侵食と気候変動の両方を緩和できる。
再録:別冊日経サイエンス262『気候危機と戦う 人類を救うテクノロジー』
再録:別冊日経サイエンス253『世界の現場から 実践SDGs 格差・環境・食糧問題の現実解』
ウィスコンシン大学マディソン校ウィスコンシン・ディスカバリー研究所の所長。オバマ大統領の科学顧問を務めた。近著は2021年11月に出版される「A World Without Soil」(エール大学出版局)。
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「土壌を守る不耕起農法」,D. R. ハギンズ/J. P. レガノルド,日経サイエンス2008年11月号。
原題名
How Dirt Could Help Save the Planet(SCIENTIFIC AMERICAN July 2021)
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