日経サイエンス  2021年12月号

宇宙膨張の歴史を明かす銀河地図

K. ドーソン(ユタ大学) W. パーシバル(加ウォータールー大学)

 ダグラス・アダムスのSF小説『銀河ヒッチハイク・ガイド』(風見潤訳,新潮社)にあるように「宇宙は大きい。(中略)にわかには信じられぬほど広く,大きく,茫漠としている」。私たち著者を含め多くの天文学者はそんな宇宙のできる限り広い範囲を地図化することに研究人生を捧げてきた。宇宙が実際にどれくらい広く,どのような仕組みで成り立っているかを明らかにする。

 私たちが作っている地図は宇宙の歴史的変化を生み出してきた物理を調べるのに不可欠だ。2020年7月,私たちが20年間取り組んできたプロジェクト「スローン・デジタル・スカイサーベイ(SDSS)」が過去最大の宇宙地図を公開した。地球の周辺領域から遠い彼方までのすべてが含まれた地図だ。この3次元地図は宇宙初期の時代までカバーしており,何十億光年もの範囲に400万個の銀河が案内標識のように配置されている。

 この地図から銀河の分布がランダムではないことがわかる。銀河が集まってパターンを作っているのだ。銀河が長いフィラメントや2次元シートを形成している領域もあれば,銀河がほとんど存在しない暗いボイド領域もある。このようなパターンの起源は銀河が誕生する前,ビッグバンから10億年もたたない時期にあると考えられている。

 宇宙史をできる限りカバーする地図を作ることでそのようなパターンの成長を記録でき,その指針となった基本法則を推定できる。この銀河の地図帳は宇宙の幾何学的構造や宇宙膨張を加速させている暗黒エネルギーの性質など,物理学の最大級の謎を理解するうえで不可欠な情報を提供してくれるのだ。

著者

Kyle Dawson / Will Percival

ドーソンはユタ大学の物理・天文学教授。eBOSSプロジェクトの研究代表者であり,近く始まるDESIプロジェクトの共同広報担当者。

パーシバルはウォータールー大学(加オンタリオ州)ウォータールー天体物理学センターの所長で,ペリメーター理論物理学研究所のアソシエイト・メンバー。eBOSSのサーベイ担当科学者であり,ユークリッド衛星ミッションの主任科学コーディネーター。

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闇の宇宙を探る 暗黒エネルギーサーベイ」,J. フリーマン,日経サイエンス2016年7月号。

原題名

A New Map of the Universe(SCIENTIFIC AMERICAN May 2021)

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