日経サイエンス  2021年11月号

創刊50周年企画:科学の50年そして現在

南部陽一郎の 「対称性の自発的破れ」から半世紀 宇宙の暗黒に迫る

村山斉(カリフォルニア大学バークレー校/東京大学)

 宇宙のほとんどは暗黒物質と暗黒エネルギーという正体不明の存在でできている。この宇宙の暗黒セクターは,素粒子物理学のベースである「標準理論(標準モデル)」が直面する問題と深いつながりがある。そうした問題を解く有力な考え方が,半世紀以上前に南部陽一郎博士が提唱した「対称性の自発的破れ」という理論だ。素粒子論と宇宙論のリーダーの1人である村山斉博士は,この南部理論を駆使し,暗黒セクターに関わる様々な研究成果を上げている。

著者

村山斉(むらやま・ひとし)

1964年東京生まれ,91年東京大学大学院博士課程修了。東北大学,米国立ローレンス・バークレー研究所を経てカリフォルニア大学バークレー校に。2000年に同校の教授,04年から同校マックアダムス冠教授になり,現在に至る。東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構では初代機構長として2007年から11年間,同機構を主導,今も主任研究者・ 教授として活動。19年に東京大学はその功績から特別教授の称号を授与。超対称性の自発的破れの研究で西宮湯川記念賞受賞。一般向け著作も多く,『宇宙は何でできているのか』 (2010年,幻冬舎新書)はベストセラーになった。背景画像は,すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ(HSC)で撮影した深宇宙の画像。

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