日経サイエンス  2021年11月号

フロントランナー挑む 第119回

発生や進化の仕組み独自の視点で解き明かす:田中幹子

滝 順一(日本経済新聞編集委員)

太古の動物が陸に上がりヒレが四肢に変化した謎を研究し成果を上げた
論文熟読と考察,実験を重ね,独創的な仮説を打ち立てて検証する
種を超えた時間軸の長い研究成果の影響は生物学にとどまらない


地球上の動物の形はどうやって進化してきたのか。東京工業大学生命理工学院教授の田中幹子は個体の発生プログラムに生ずる小さな変化が受け継がれた結果,多様な形を生む進化のメカニズムが生じたと考える。四肢の発生と進化の研究業績などが高く評価され,優れた女性科学者を称える「猿橋賞」を今年5月に受賞した。 (文中敬称略)

田中幹子(たなか・みきこ)
東京工業大学生命理工学院教授。1970年宮城県生まれ。1993年大阪市立大学理学部卒業,1998年東北大学大学院理学研究科博士課程修了。博士研究員として英ロンドン大学,ダンディー大学,米オレゴン大学への留学を経て2004年東京工業大学大学院生命理工学研究科助教授。2016年同大生命理工学院生命理工学系准教授を経て2021年2月に現職。同年5月に「脊椎動物の四肢の発生と進化に関する研究」で第41回猿橋賞を受賞。

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