日経サイエンス  2021年10月号

飲み水を求めて 渇きが促した人類進化

A. Y. ロージンガー(ペンシルベニア州立大学)

汗だくになりながらボリビアのアマゾンを徒歩で移動していた私たちは,大きなつる植物の前で立ち止まった。ガイドを務めるのはこの地に暮らすチマネ族の友人,フリオだ。彼によれば,チマネ族は老生林で水が必要になったときにこの植物を利用するという。彼はマチェーテ(大きなナタ)をつる植物の枝に振り下ろし,2分もかからずに1mほどの長さの枝を切り取った。フリオは自分の口の上に枝をかざし,切り口から流れ出てきた水を数秒間飲んで渇きを癒してから私に渡してくれた。

飲み水の調達方法についてフリオが教えてくれたことから,人間の環境適応に関する根本的な疑問が生じる。人類はその進化の過程において,きれいな水の乏しい環境で生存に必要な水需要を満たす方策をどう発達させてきたのだろう。

ヒトは他の哺乳動物よりも水に大きく依存している。最近の研究から,ヒトが水を多く必要とするようになった原因と,喉の渇きを癒すためにどんな手段を生み出してきたかが明らかになってきた。食物と同じく,水も人類進化の方向性を決めてきたのだ。

著者

Asher Y. Rosinger

ペンシルべニア州立大学の人類生物学者。人間の水分摂取量のばらつきと,それが環境資源や疾患リスクとどう関連しているかを研究している。

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なぜヒトだけ無毛になったのか」,N.G. ジャブロンスキー,日経サイエンス2010 年5 月号。別冊日経サイエンス194『化石とゲノムで探る人類の起源と拡散』に収載。

原題名

The Human Thirst(SCIENTIFIC AMERICAN July 2021)

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チマネ族持久狩猟