日経サイエンス  2021年10月号

特集:新しい恐竜像

卵の化石から読み解く恐竜の進化

真鍋 真(国立科学博物館)

鳥の卵の殻は硬く,トカゲやヘビ,ウミガメの卵はやわらかい。では恐竜はどうだろう?

現生動物の中で恐竜に最も近縁なワニ類は硬い殻の卵を産み,鳥類の卵も硬い殻を持つ。進化の系統においてワニ類と鳥類の中間に位置している恐竜はみな硬い殻の卵を産んでいただろうと長年考えられてきた。

2020年6月, これを覆す発見があった。アメリカ自然史博物館のグループが鳥盤類のプロトケラトプスと竜盤類のムスサウルスの卵の殻の化石をレーザーを使った手法で調べ,これらの恐竜がやわらかい殻の卵を産んでいたことを突き止めたのだ。恐竜が登場して間もなく分かれたこの2つがやわらかい殻を持つ卵を産んでいたならば,最初の恐竜もやわらかい殻を持つ卵を産んでいた可能性が高い。

後に登場した竜脚類のカマラサウルスや鳥脚類のマイアサウラ,鳥類に近い獣脚類などは,いずれも硬い殻の卵が化石で確認できる。つまり,恐竜はその進化の過程で,硬い殻を獲得したことになる。

卵の殻の硬さなど,一見些細なことに見えるかもしれない。だがそこには恐竜の生態とその進化を解き明かす多くのヒントが隠されている。恐竜の卵の化石は最近,日本でも相次いで発見され注目を集めた。重要な発見が相次ぐ恐竜の卵についての研究を紹介し,恐竜学の近未来を展望したい。

訂正
2021年10月号47ページ中段の上から6行目「竜脚類のティタノサウルス類や獣脚類のロウリンハノサウルスの卵化石は気孔が少ないグループに属し」は誤りでした。正しくは「気孔が多いグループに属し」です。
※ダウンロードPDFでは修正版を販売いたします。

著者

真鍋 真(まなべ・まこと)

国立科学博物館副館長,標本資料センター・コレクションディレクター,分子生物多様性研究資料センター長。専門は中生代の爬虫類や鳥類の形態進化。

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