日経サイエンス  2021年10月号

フロントランナー挑む 第118回

国産技術で天体望遠鏡を 企業とともに磨き実用化:栗田 光樹夫

小玉祥司(日本経済新聞編集委員)

最先端の天体望遠鏡を国産技術だけで作ろうと技術開発に取り組む
東アジア最大級の望遠鏡を実現し観測網の充実に貢献した
次世代の巨大望遠鏡も見据えて独自の技術に磨きをかけている


日本の技術で世界最先端の天体望遠鏡を作ろう――。京都大学准教授の栗田光樹夫は壮大な目標を掲げて挑んできた。国立天文台のすばる望遠鏡(ハワイ島)は世界最大級だが心臓部の鏡は米国製。栗田は精密加工技術の開発に取り組み,口径が3.8 mで東アジア最大級の京大岡山天文台の望遠鏡「せいめい」(岡山県浅口市)では鏡を含めて完全国産化を果たした。国際共同計画で準備が進む30m望遠鏡TMTのような次世代の巨大望遠鏡にも生かそうと,技術を磨き続ける。 (文中敬称略)

栗田 光樹夫(くりた・みきお)
京都大学准教授。1976年静岡県生まれ,45歳。2000年名古屋大学理学部卒業,2005年名大大学院博士課程修了。同大助教などを経て2012年より京都大学准教授。京大岡山天文台の3.8m望遠鏡「せいめい」のプロジェクトマネージャーを務めた。2017年に望遠鏡用の鏡を製作するロジストラボを設立,最高技術責任者に就任。2020年度吉田庄一郎記念・ニコン天文学業績賞。

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