日経サイエンス  2021年8月号

特集:ヤポネシア

浮かび上がる縄文人の姿と祖先

古田 彩(編集部) 協力:篠田謙一/神澤秀明(ともに国立科学博物館) 佐藤孝雄(慶應義塾大学)

 今から約3500〜3800年前の縄文時代後期,北海道の礼文島北部の海岸沿いの集落で,ひとりの女性が亡くなった。後に船泊遺跡と呼ばれるこの集落に住んでいた人々の多くと同様,彼女は貝で作ったブレスレットやアンクレットを身に着けた状態で埋葬され,長い眠りについた。

 だがその遺骨は今から23年前,1998年の船泊遺跡の大規模調査によって発掘され,再び日の目を見ることになった。研究者たちを驚かせたのは,その骨の保存状態の良さである。まるで最近埋葬されたかのように,全身がほぼ完全な形で残っていたのだ。

「船泊23号」と名付けられたこの女性は2019年,最新技術によって,骨に残ったDNAが詳しく調べられた。彼女はゲノム全体を現代人並みの精度で解析された初の縄文人となり,顔かたちや体質,婚姻関係,そしてヤポネシア(日本列島)に来る前に東アジア大陸にいたときのルーツまで,多くのことを語り始めた。

協力 篠田謙一(しのだ・けんいち)/神澤秀明(かんざわ・ひであき)/佐藤孝雄(さとう・たかお)
篠田は国立科学博物館館長。ヤポネシアゲノムのプロジェクトにおいて古代人ゲノムの決定と分析を担う研究班を率いている。神澤は国立科学博物館人類研究部研究員。縄文人を中心に古代東ユーラシア人集団の核DNAとミトコンドリアDNAを分析している。佐藤は慶應義塾大学文学部教授。北海道やシベリアなどの遺跡から出土する動物骨や貝殻の研究に取り組んでいる。

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