日経サイエンス  2021年6月号

脳のブラックボックスを開く 見た映像を脳活動から再現:西本伸志

吉川和輝(日本経済新聞編集委員)

目で見た映像を脳活動から再現することに成功して世界を驚かせた
脳機能を模擬した人工モデルを考案するなど,独創的な発想の持ち主
テーマは脳情報からAI研究,非言語コミュニケーションまで幅広い


 朝起きてから夜眠りにつくまで,人間には目や耳などを通じて様々な知覚情報が飛び込んでくる。まるで「動画」を延々と見ているようなものだが,この時脳の中では一体何が起きているのか。大阪大学教授の西本伸志はそうしたダイナミックな脳の情報処理のブラックボックスを開いて初めて映像化してみせた研究者だ。脳内のリアルな知覚体験や認知処理の仕組みを解明することを通じて,人工知能(AI)と人間の知能との距離を縮めることができるとも考えている。   (文中敬称略)

西本伸志(にしもと・しんじ)
大阪大学教授。1978 年大阪府生まれ。2000年大阪大学基礎工学部飛び級中退。2005年に同大学院基礎工学研究科博士後期課程修了後,米カリフォルニア大学バークレー校で研究。2013年情報通信研究機構(NICT)脳情報通信融合研究センター(CiNet)主任研究員。2021年4月から大阪大学大学院生命機能研究科教授。NICT・CiNet 特別招へい研究員兼務。博士(理学)。

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