日経サイエンス  2021年5月号

nippon天文遺産 第30回

スプートニクとエクスプローラーを追跡したベーカー=ナン カメラ

中島林彦(日本経済新聞) 協力:渡部潤一(国立天文台) 香西洋樹(もと国立天文台)

 東西冷戦中の1957年10月,ソ連が世界初の人工衛星「スプートニク1号」を打ち上げた。米国はソ連に先駆けて打ち上げ計画を公表し,「ベーカー=ナン カメラ」という新型望遠鏡を日本など世界12カ所に設置して衛星を追跡する準備を進めていたが,先を越される形となった。米国は同年12月,準備不足のまま打ち上げを試みるも失敗。翌1958年1月末,ソ連に4カ月遅れで初の衛星「エクスプローラー1号」を打ち上げた。米ソが火花を散らす宇宙時代の幕開けに活躍したベーカー=ナン カメラは,日本では東京大学東京天文台(国立天文台の前身)に観測が託され,退役後は姫路科学館で展示されている。(文中敬称略)




再録:別冊日経サイエンス245「天文遺産 宇宙を拓いた日本の天文学者たち」

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