日経サイエンス  2021年5月号

特集:色彩の科学

編集部

 色にはドラマがある。物体の存在すら消してしまう究極の黒,貝が育んだ色褪せぬ紫。美しい色は人々を魅了し,時には争いを生み,存在感を放ってきた。そんな特別な「色」の歴史と科学に光を当てる。今年1月,イスラエルの遺跡で発見された紫の羊毛の繊維が,今から約3000年前に巻貝の分泌物から作った「貝紫」で染められていたことがわかった。聖書の時代から権力の象徴とされ,東ローマ帝国の滅亡とともに一度は失われた貝紫。その歴史と,染め方によって変化する発色の謎を解説する。また,あらゆる波長の光を吸収する「真の黒」の物質を追求する科学者たちの試みと,それが美術界に投げかけた波紋を追う。究極の黒を実現する微細構造は,実はある種の鳥の羽にも備わっているようだ。




物理が生んだ究極の黒  鴻 知佳子 協力:雨宮邦招
生物が育んだ幻の紫  田中陵二

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