日経サイエンス  2021年4月号

クジラががんにならないわけ 細胞の裏切りを検知する メカニズム

A. アクティピス(アリゾナ州立大学)

 多細胞生物は細胞が協力し合うことで生きている。しかしがん細胞はその規律を破って自分勝手にふるまい,個体を死に追いやる。クジラやゾウなどの巨大動物は体を構成する細胞が多い分,がん化する細胞も多くなりそうだが,実際にはめったにがんにならない。裏切り者を阻止するシステムが進化を経て強化されているようだ。



再録:別冊日経サイエンス250「『病』のサイエンス」

著者

Athena Aktipis

アリゾナ州立大学心理学科の准教授。同大学のアリゾナがん進化センターのプロジェクトリーダーおよび複数の機関によるヒト寛容プロジェクトの共同ディレクターを務める。著書に「The Cheating Cell: How Evolution Helps Us Understand and Treat Cancer」(プリンストン大学出版局,2020年)がある。ポッドキャスト「Zombified」の主催者。

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原題名

Malignant Cheaters(SCIENTIFIC AMERICAN 2021 January)

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