
動物がある場所から別の場所に移動する際,どうやって最短ルートを思いつくのだろう? ラットから人間まで,さまざまな動物は脳内に地図を持ち,環境についての脳内モデルによって最適ルートを探索している。
脳内地図によって表しているのは物理的空間だけではない。記憶,想像,推定,抽象的推論などの精神活動にも重要な役割を担っていることがわかってきた。
近年の研究から,脳内地図が変化する人間関係,つまり他者と自分との親密度や,他者が社会の序列のどのあたりにいるかの把握にも使われていることが示唆される。
著者
Matthew Schafer / Daniela Schiller
シェーファーはマウントサイナイ医科大学にて神経科学の博士号取得を目指している。専門は人間の脳における社会認知の神経機構の解明。シラーは同大の神経科学・精神医学の准教授で,変化する環境への適応に必要な感情制御の神経機構を研究している。
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「空間認識のカギ握る グリッド細胞」,M.-B. モーザーほか,日経サイエンス2016年6月号。別冊日経サイエンス218『脳科学のダイナミズム』に収載。
原題名
The Brain’s Social Road Maps(SCIENTIFIC AMERICAN February 2020)