
宇宙の現在の膨張の速さを表すハッブル定数の値は宇宙論において重要だが,同時に議論の的になっている。比較的最近の宇宙に存在する超新星や星の測定をもとに求めたハッブル定数と,ビッグバン直後に発せられた光を用いて求めたハッブル定数の値が食い違っているのだ。測定における技術的な問題がこの食い違いを引き起こしている可能性があるが,どこに問題があるのかわかっていない。もう1つの可能性は,この不一致が未知の現象,つまり「新しい物理」を示唆しているというものだ。
著者
Richard Panek
著書「4%の宇宙」(邦訳はSBクリエイティブ,2011年)で受賞歴のあるサイエンスライター。サイエンスライティングの部でグッゲンハイムフェローに選出されている。近著は「The Trouble with Gravity: Solving the Mystery BeneathOur Feet」(ホートン・ミフリン・ハーコート,2019年)。
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「暗黒エネルギーの謎」,A. G. リース/M. リヴィオ,日経サイエンス2016年7月号。
原題名
A Cosmic Crisis(SCIENTIFIC AMERICAN March 2020)
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ハッブル定数/宇宙マイクロ波背景放射/宇宙論/暗黒エネルギー