日経サイエンス  2021年4月号

特集:宇宙論にほころび

 私たちには知覚できないが,宇宙には重力の引力を上回る斥力を及ぼす暗黒エネルギーが満ち,宇宙膨張を加速させている。その正体は何か。アインシュタインが一般相対論に導入した宇宙定数であるという説や,量子力学で存在が予想される真空エネルギーであるという説が有力視されているが,よくわかっていない。それが近年,いずれの説をとるにしてもうまく説明できない観測結果が出て,研究者を悩ませている。現在の宇宙膨張の速さ,つまりハッブル定数は2つの手法で測定されているのだが,両者の間には一見解消しがたい矛盾が存在している。この不一致は「新しい物理」の存在を示唆しているのかもしれない。
 
 
 
真空エネルギーと暗黒エネルギーは折り合えるか  C. モスコウィッツ
ハッブル定数 食い違う観測値  R. パネク

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