日経サイエンス  2021年3月号

特集:COVID-19 重症化の謎

免疫系の異様な暴走 肺や血管で何が起きているか

岩崎明子 P. ウォン(ともにエール大学)

新型コロナウイルスSARS-CoV-2はSARSやMERSなど以前のコロナウイルスと同様,人体の免疫系を暴走させる場合があり,その結果として起こる炎症が危険な症状につながる。重症患者の血液中には高レベルの免疫タンパク質(サイトカイン)が検出されている。免疫細胞を感染部位に動員するサイトカインが増えている例や,好中球という免疫細胞が異常に多い例などが見つかった。好中球が病原体を絡め取るために放出した構造物が血管に詰まるとダメージを生じるようだ。このように自然免疫系で防御を担っているサイトカインや単球,好中球などが統制を失うほか,適応免疫系も調子が狂う。長期的な適応免疫を担うT細胞の血中レベルが下がるなど,免疫に関する多くの特徴が認められる。



再録:別冊日経サイエンス246「感染症Ⅱ 新型コロナと闘う」

著者

岩崎明子 / Patrick Wong

岩崎はエール大学免疫学科および分子細胞発生生物学科のフォン・ツィードヴィッツ記念教授で,ハワードヒューズ医学研究所の研究員。本記事の掲載にあたり日本語訳を監修した。ウォンはエール大学岩崎研究室の大学院生。

原題名

The Immune Havoc of COVID-19(SCIENTIFIC AMERICAN January 2021)

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