日経サイエンス  2020年12月号

手の指 予想外の起源と進化

J. A. ロング(豪フリンダース大学) R. クルティエ(加ケベック大学)

四肢動物の手が祖先の魚のひれからどのように進化したのか,推移の証拠となる化石が見つかっていなかったため不明だった。だが3億7500万年前のエルピストステゲ・ワトソニという魚の完全骨格化石が今年3月に報告され,手と指の起源と四肢動物の誕生に関するこれまでの仮説を揺るがしている。脊椎動物が陸上に進出する以前に,指がすでに進化していたらしい。解析に当たった研究者が自ら詳しく解説する。



再録:別冊日経サイエンス244「動物の行動と進化 環境が育んだ驚異」

著者

John A. Long / Richard Cloutier

ロングは南オーストラリア州にあるフリンダース大学で古生物学の戦略教授を務めている。脊椎動物の初期進化が専門で,西オーストラリア州のゴーゴー累層に立体的に保存されてきたデボン紀の化石魚などを調べてきた。科学者および著述家としての長期にわたる業績に対し,権威あるベッティソン・アンド・ジェームズ賞を2020年に受賞。

クルティエはカナダのケベック大学リムスキ校の進化生物学の教授。初期脊椎動物の進化のパターンとメカニズム,ならびに最近の魚類と両生類の進化発生生物学を主な研究テーマとしている。デボン紀のミグアシャ化石発掘現場で動物相と古生態,古環境を30年間以上にわたって調べてきた。

関連記事
魚から四肢動物へ 見えてきた上陸前後の変化」,J. A. クラック,日経サイエンス2006年3月号。

原題名

The Unexpected Origin of Fingers(SCIENTIFIC AMERICAN June 2020)

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