日経サイエンス  2020年11月号

特集:アルツハイマー病

発病の謎を解く新たな視点

K. S. コシク

 最初に報告されてから100年以上がたつのに,まだ認知症状を改善できる薬はできていない。アルツハイマー病患者の脳の目立った特徴である老人斑をつくるアミロイドβを標的にした抗体医薬がいくつか作られてきたが,認知症が進むのを食い止められずにいる。もう一度,基本に立ち返ってこの病気の発症メカニズムを解明するべきだろう。本稿では取り組むべき5つの視点を取り上げる。異常なタンパク質を取り除く仕組みの機能不全,タンパク質の細胞内での相転移,脳での免疫反応の結果に生じる炎症,個々の遺伝子の変異の影響度,ニューロン間の信号伝達の異常の5つだ。



再録:別冊日経サイエンス252『脳科学の最前線 脳を観る 心を探る』

著者

Kenneth S. Kosik

カリフォルニア大学サンタバーバラ校の神経科学教授で,神経科学研究所の共同所長。研究医として早期発症型アルツハイマー病の大規模研究を主導し,アルツハイマー病の重要な特徴である脳内のタウタンパク質のもつれの発見に貢献した。

関連記事
アルツハイマー病予防への挑戦」 G. スティックス,日経サイエンス2015年9月号

原題名

The Way Forward(SCIENTIFIC AMERICAN May 2020)

サイト内の関連記事を読む

キーワードをGoogleで検索する

認知症アルツハイマー病アミロイド抗体医薬