日経サイエンス  2020年10月号

フロントランナー挑む 第106回

故障を織り込んだ発想で宇宙工学のエキスパートに:木村真一

小玉祥司(日本経済新聞編集委員)

小惑星探査機「はやぶさ2」をはじめ,手がけた宇宙用カメラは30以上
ロボットを使い宇宙でアンテナを組み立てる技術の実験にも成功した
装置の故障や資源の不足を想定した発想で宇宙滞在技術の開発を目指す

 

 
「 日本にはカメラのキムラ製作所がある」。東京理科大学教授の木村真一はこう呼ばれ,宇宙開発の専門家らから信頼を集める。小惑星探査機「はやぶさ2」をはじめ手がけた宇宙用カメラは30台以上。「絶対に壊れない」ではなく「壊れても使える」という木村の発想は,超小型衛星にも搭載できる低コストの小型カメラを実現した。そして今,宇宙カメラにとどまらず,月面など宇宙で人間が生活する環境づくりに挑もうとしている。 ( 文中敬称略)

木村真一(きむら・しんいち)
東京理科大学理工学部教授。1965年生まれ。東京都出身。1993年東京大学薬学系研究科博士課程修了,郵政省通信総合研究所(現・情報通信研究機構)入所。2007年東京理科大学教授,2018 年理科大スペース・コロニー研究センター副センター長。2020年宇宙航空研究開発機構(JAXA)から「超小型カメラ技術による深宇宙ミッションへの貢献」で宇宙科学研究所賞。薬剤師の国家資格を持つ。

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