日経サイエンス  2020年9月号

数理が語る格差拡大のメカニズム

B. M. ボゴシアン(タフツ大学)

多くの国で所得格差が危機的なまでに拡大している。なぜなのか? 自由市場で公正な取引が行われている限り,損をしたのはその人の責任で,貧富の差は能力の違いにすぎないと一般には考えられている。しかし物理学者と数学者が近年に開発した数理モデルは,公正な自由経済でも富の不均衡が自然発生することを示している。物理系の相転移のように対称性が自発的に破れて,不平等な状態が生じるという。



再録:別冊日経サイエンス249「科学がとらえた格差と分断 持続可能な社会への処方箋」

著者

Bruce M. Boghosian

タフツ大学の数学の教授。応用力学系理論と応用確率論を研究している。

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仕組まれた経済 格差拡大の理由」,J. E. スティグリッツ,日経サイエンス2019年5月号。

原題名

The Inescapable Casino(SCIENTIFIC AMERICAN November 2019)

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