
COVID-19のパンデミックは,世界中の人々の生活を一変させた。一時は世界人口の1/3が行動制限下に置かれ,人々は今も感染への不安,愛する人の死,失業、社会的つながりの喪失など多岐にわたるストレスに直面している。
精神の回復力に関するこれまでの研究によれば,天変地異や命にかかわる怪我などで過酷な経験をしても,2/3の人はわずかな精神症状を示すのみで,日常生活に復帰している。25%の人は一時的にうつやPTSDに陥るが,やがて回復する。だが長期にわたって苦しむ人も約1割いる。
だが今回のパンデミックは,これまで人類が経験してきた災害とは様相が異なる。地震やハリケーンなどの災害なら,影響が後を引くことはあっても,災害そのものは一定期間のうちに終わる。今回のパンデミックは影響を受けた人が桁違いに多いうえ,いつ終わるかという予測がつかない。人々は終わりのないストレスにさらされ続けている。
前例のない事態にどう対処し,心の健康を支えればいいのか。その答えを探る心理学の研究が始まっている。
再録:別冊日経サイエンス243「脳と心の科学 意識,睡眠,知能,心と社会」
関連記事 「立ち直る力のメカニズム」,G. スティックス,日経サイエンス2011年6月号。
原題名
The Biggest Psychological Experiment(SCIENTIFIC AMERICAN July 2020)
サイト内の関連記事を読む
キーワードをGoogleで検索する
新型コロナウイルス/COVID-19/パンデミック/レジリエンス/トラウマ/PTSD/うつ