日経サイエンス  2020年8月号

フロントランナー挑む 第104回

宇宙気候学の気鋭 宇宙と地球環境に迫る:宮原 ひろ子

地球の天候に影響を及ぼす宇宙線や太陽活動
老木や氷床,石灰岩に過去の痕跡を探り
宇宙と地球環境の未知の関係を解き明かす



 宇宙から降り注ぐ放射線(宇宙線)や太陽活動の強弱が,地球の気候や天候にどんな影響を及ぼしているのか。気候変動の要因を宇宙スケールで考える宇宙気候学の第一線に立つのが,武蔵野美術大学准教授の宮原ひろ子だ。老木の年輪や南極氷床から掘り出した氷,石灰岩の年層など,過去の変動の歴史が年単位で刻まれた「縞模様」を丹念に解読して,宇宙と地球環境をつなぐミッシングリンクに迫ろうとしている。(文中敬称略)
 太陽活動と宇宙線の変動の歴史をたどる世界初の手法を開発――。2019年6月,宮原はこんな内容のプレス発表を行った。景勝地として名高い中国雲南省の白水台に広がる石灰質堆積物から採取した試料が,過去の太陽活動や宇宙線の変動を追跡するツールとして使えることを明らかにした。弘前大学助教の堀内一穂らとの共同研究の成果だ。



再録:別冊日経サイエンス248『科学を仕事にするということ 未来を拓く30人』

宮原ひろ子(みやはら・ひろこ)
武蔵野美術大学准教授,宇宙気候学。1978年埼玉県生まれ。2001年名古屋大学理学部卒。2005年名古屋大学大学院理学研究科素粒子宇宙物理学専攻博士課程を修了。理学博士。東京大学宇宙線研究所や米航空宇宙局(NASA)などで太陽活動や宇宙線の長期変動を明らかにする研究に従事した。2013年武蔵野美術大学に移り2015年から現職。第1回米沢富美子記念賞を今年受賞した。著書に『地球の変動はどこまで宇宙で解明できるか』など。

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地球は冷えるか」宮原ひろ子,日経サイエンス2012年8月号。

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